火

火は、自分の中で燃えている力として読まれてきた。温め、照らし、煮炊きをし、要らなくなったものを焼いて清める。夢の中の火は、情熱や気力、生きる力そのもので、その大きさがいまの勢いを、自分がそれを灯したか、守ったか、消したかが、力の扱い方を表す。日本では、火は神が宿る清らかなものとされ、正月飾りを焼くどんど焼きの火で年神を空へ送り、出かける人の背に火打石を打って身を清めてきた。
火の夢
火の夢は、多くが吉夢とされる。表しているのは、情熱、気力、ひらめき、そして人の心を温める力。燃え広がって家や建物を包む夢は火事の夢で、読み方が変わる。→ 火事
読み分けの鍵は二つ。
- 火の大きさと色:小さくても澄んだ明るい炎なら、気力が静かに満ちている。赤々と大きいなら、勢いが強まっている。煙ばかりで燃えきらないなら、思いがくすぶっている
- 火と自分の関わり方:自分で灯したか、手に持っていたか、囲んで温まっていたか、消したか、消えるのを見ていたか
火をつける・火を灯す夢
マッチを擦る、コンロのつまみを回す、ろうそくに火を移す。自分の手で火をつける夢は、新しいことに火がつく夢。やりたかったことに踏み出す気持ちが、形になりはじめている。一度でぱっとついたなら、始めたことはすんなり進む。何度擦ってもつかなかったなら、準備がもう少し要る。
ろうそくの火の夢
ろうそくの炎は、自分の気力と、先を照らす希望。まっすぐ明るく燃えていたなら、心が落ち着いて力が満ちている。たくさんのろうそくが灯っていたなら、支えてくれる人や、叶えたい願いがいくつもある。人からろうそくをもらう夢は、誰かの励ましが届く夢。
- 仏壇のろうそく:先祖や亡くなった人に見守られている夢。火を灯して手を合わせていたなら、その思いは向こうに届いている。→ 亡くなった人
- 誕生日ケーキのろうそく:新しい年や新しい自分を迎える夢。吹き消して気持ちよかったなら、ひとつ区切りをつけて次へ進める
- 赤いろうそく:恋や情熱に火がともる夢。→ 赤
ろうそくの火が消える夢
ふっと消えた火は、気力がひと息ついている知らせ。無理を重ねてきたなら、休む時期。風で消えたなら、まわりの声に気持ちが揺さぶられている。夢の中でもう一度灯せたなら、力はすぐに戻ってくる。
焚き火の夢
焚き火は、自分を表に出す力と、人と分け合う温かさの夢。自分で焚き火をしていたなら、考えや気持ちを外へ出せる時期で、それが周りを動かしていく。誰かと火を囲んでいたなら、その人との間に打ち解けた温かい縁が育っている。焚き火を消して片づけた夢は、ひとつの集まりや役目を気持ちよく終えられる夢。
コンロ・かまどの火で料理をする夢
鍋やフライパンを火にかける夢は、暮らしの力が整っている夢。弱火でことこと煮ていたなら、時間をかけて育てていることが実る。火が強すぎて焦げつきそうだったなら、気持ちが先走っている。台所の火は、家の暮らしを支えてきた火でもある(下の「日本の縁起」)。→ 家
火を消す夢・火が消えない夢
小さな火を自分で消す夢は、燃え上がりかけた気持ちを、自分で収められる夢。どうしても消えない火は、抑えようとしても抑えきれない情熱や怒り。消えないことに怖さより頼もしさを感じたなら、その熱はまだ燃やしていいもの。水で消す夢は → 水
火の玉・鬼火を見る夢
夜の中をふわりと漂う火の玉は、魂や、見えない側からの知らせ。怖い夢に見えるが、夢占いでは、目に見えないものに守られている夢として読まれる。
- 青い火の玉・青白い火:静かな祈りや、心の奥の思い。亡くなった人を思い出す時期に見やすい。→ 青
- 赤い火の玉・オレンジの火の玉:強い思いや、急な知らせ
- 白い火の玉:清らかな守り。→ 白
- 空から火の玉が落ちてくる:思いがけないひらめきや、大きな出来事が舞い込む
- 火の玉から逃げる:向き合いたくない気持ちがある。逃げ切ったあとに振り返れたなら、もう怖がらなくていい
青い炎の夢
赤い炎より熱いとされる青い炎は、表には見えない、静かで強い意志。落ち着いた顔の下で、決めたことを着々と進められる時期。
火傷をする夢
熱いと思った瞬間に手を引いた夢は、勢いで踏み込みすぎたことへの知らせ。恋でも仕事でも、少し距離をとって温度を確かめる時期。
現実で火に出会ったとき
- 仏壇や神棚のろうそくの火が揺れる・伸びる:スピリチュアルでは、先祖や神さまが近くに来ているしるし、祈りが届いているしるしとされる。静かに手を合わせる
- 火の玉を見た:日本では昔から、死者の霊や人の思いが火になって漂うと言われてきた(下の「鬼火」)
- 切り火を打ってもらう:下の「日本の縁起」
日本の縁起
- 火の神・カグツチ:『古事記』で、イザナミは火の神、火之迦具土神を生んだときに火傷を負い、それがもとで亡くなった。嘆いたイザナギは十拳剣でカグツチを斬り、その血からは雷の神・建御雷之男神などが生まれた。火伏せの愛宕さま、秋葉さまにまつられている神で、荒神さまとあわせて → 火事
- 火の中で生まれた神々:桜の女神コノハナサクヤビメは、一夜で身ごもったことをニニギに疑われ、「天の神の子なら無事に生まれる」と産屋に自ら火を放ち、燃えさかる中で火照命・火須勢理命・火遠理命の三柱を生んだ。火は、偽りを焼き、まことを明かすものでもあった。→ 桜
- 倭建命の火打石:倭建命は、叔母の倭比売から授かった袋の中の火打道具で、野に火を放たれた危機を逃れた
- 切り火:出かける人の背に火打石を打ち、火花で身を清めて厄を除ける。江戸時代の中ごろには広まっていた習わしで、今も鳶職や花柳界、柴又の門前町などで毎朝続けているところがある
- どんど焼き(左義長):小正月の1月14日の夜か15日の朝に、門松やしめ飾り、書き初めを持ち寄って焼く。正月に迎えた年神を、炎とともに見送る火とされる。書き初めを焼いた炎が高く上がると字が上達し、その火で焼いた餅や団子を食べると風邪をひかない。灰を持ち帰って家のまわりにまくと、その年の病を除くとも言われる
- 鬼火:夜の野を漂う正体の分からない火。死者の霊や人の思いが火となって現れたものとされ、色は青が多く、青白いもの、赤いもの、黄色いものもある。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には、京都の壬生寺の地蔵堂で盗みを働いた僧が鬼火になった「叢原火(宗源火)」が描かれている。狐の灯す火は → 狐
- 迎え火・送り火:お盆に先祖を迎え、送る火。→ 亡くなった人
タロットの火
いまのタロットでは、小アルカナのワンド(棒)の組が火に当てられる。やる気、行動、始めること、情熱を受け持つ組。大アルカナにも、灯りや炎が絵柄の要になっている札がある。以下はウェイト版の大アルカナの絵柄。
- 隠者:山の頂に立つ老人が、星の光るランタンを掲げている。ウェイトは、この灯りは「私のいるところへ、あなたも来られる」と告げている、と書いた。ろうそくの火の夢と同じく、暗い中で先を照らす小さな火の札
- 悪魔:山羊の角を持つ悪魔が、燃えさかる松明を逆さに、地面へ向けて持っている。火が上へ燃え上がらず、下へ向けられた姿。消えない火の夢で苦しかったなら、その熱がどこに向いているかを見る札
- 塔:窓から炎が噴き出す札で、火事の夢と重なる。→ 火事
世界の象徴としての火
- プロメテウス(ギリシャ):神々から火を盗み、ウイキョウの茎に隠して人間に与えた。怒ったゼウスは彼を岩に鎖でつなぎ、毎日鷲に肝臓をついばませた。肝臓は夜ごとに元に戻り、やがて英雄ヘラクレスが鷲を射て彼を解き放った。火は、人が神から受け取った知恵と技の始まりとされる
- ヘスティア:家の中心の炉の火を守る女神。→ 家
- 五行の火(中国):木・火・土・金・水の五行で、火は夏と南と赤にあたり、南を守るのは朱雀。木が燃えて火を生み、火が燃えたあとの灰が土に還る。水は火を消し、火は金属を溶かす。→ 赤、水
どんど焼きの炎は、正月のあいだ家にいた年神を、書き初めの紙と一緒に空へ上げていく。炎が高く上がれば字の上達のしるしになり、その火で焼いた団子は一年の風邪を除く。夢でマッチを擦り、ろうそくに移した小さな火も、灯した手で守っていれば、次の朝の台所の火につながっていく。

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今日の一枚
大アルカナから一枚。
