水

水は、器に合わせて形を変え、映し、流し、潤すものとして読まれてきた。決まった形を持たず、入れられた器の形になる。そのため夢の中の水は、いまの自分の心そのものを表す。澄んでいれば心も澄んでいて、濁っていれば、言葉にならないものが沈んでいる。日本では、元日の朝に汲む若水や、お寺の井戸から汲む香水のように、新しく汲んだ水に一年の清らかさを託してきた。
水の夢
水の夢は、感情、生命力、そしてお金や運の巡りを表す。雨が空から降ってくる水なら、夢の水は、自分の足もとや手の中にある水。飲む、汲む、入る、こぼす、と、自分がどう扱ったかがそのまま読みになる。
読み分けの鍵は、水が澄んでいたか、濁っていたか。夢占いでは、同じ場面でも水の清濁で吉凶が入れ替わる。澄んだ水があふれる夢は喜びがあふれる夢で、濁った水があふれる夢は、こらえてきたものが限界に来ている夢になる。次に見るのは、水が止まっていたか、動いていたか。たまっている水は抱えている気持ち、流れている水は、もう動きはじめた気持ち。
澄んだ水・透明な水の夢
底まで見通せる水は、心に曇りがない状態。体にも気持ちにも力が満ちていて、運気が上向いている。水面が光っていたなら、迷っていたことに答えが出る時期。
濁った水の夢
泥で濁った水、どぶの水は、胸の中に沈めてきたものの表れ。人に言えない心配ごとや、片づいていない過去。ただ、濁った水はかき混ぜるのをやめれば、泥が沈んでまた澄んでくる。夢の中で濁りが薄れていったなら、その気がかりはもう落ち着きはじめている。黒い水が流れ出ていく夢は → 黒
水を飲む夢
澄んだ水をおいしく飲む夢は、渇いていたところに力が戻ってくる吉夢。仕事でも恋愛でも、意欲が湧いて動ける時期に入る。何杯も飲み続けていたなら、それだけ心が渇いていた。濁った水を飲む夢は、疲れがたまっている知らせで、休むことを先にしていい。
湧き水を汲んで飲む夢は、水の夢のなかでも特に喜ばれる。自分の内側から新しい力や考えが湧いてくる。
水があふれる夢・水浸しの夢
お風呂やバケツから水があふれる夢は、気持ちが器に収まりきらなくなっている姿。うれしくてあふれたなら喜びごと、困って見ていたなら抱えきれなくなっている。部屋や床が水浸しになる夢は、感情が暮らし全体にしみ出している。家の水浸しは → 家。トイレの水があふれる夢は → トイレ
蛇口の水が止まらない夢・水が漏れる夢
止めようとしても止まらない水は、自分でも抑えきれない気持ちや、出ていくお金。澄んだ水が勢いよく出ていたなら、止まらないのは運のほうで、幸運が続く。水漏れの夢は、言うつもりのなかったことが外へ漏れていないかを見る時期。洗濯機からの水漏れなら、暮らしの細かなところに気を配る。
水が出ない夢
蛇口をひねっても水が出ない夢は、気力が枯れかけている、あるいは、欲しい助けが届いていないと感じている。井戸や湧き水を探しに行く夢に続いたなら、自分で水源を見つけにいける。
水をこぼす夢
手からこぼれる水は、手放しかけているもの。きれいな水をこぼしたなら、せっかくの意欲を取りこぼしている。汚れた水をこぼしたなら、いらないものが自分から離れていく、よい夢になる。
水の中の夢・水の中で息ができる夢
水に入る夢は、自分の感情の奥へ入っていく夢。澄んだ水の中を泳いでいたなら、気持ちのままに動けている。服のまま水に入った夢は、身構えずに相手の懐へ飛び込んでいく時期。
水の中で息ができる夢は、深い感情の中にいても溺れない、という夢。いま向き合っている気持ちを、落ち着いて扱える。苦しくなった夢は → 溺れる
水たまりの夢
道の水たまりは、小さく残った気がかり。澄んだ水たまりに空が映っていたなら、その気がかりは思ったより軽い。水たまりに足を取られて落ちる夢は、小さなつまずきに気をつける知らせ。
火を水で消す夢
燃え上がった怒りや焦りを、自分で鎮められる夢。→ 火事
大雨・洪水の夢
→ 雨
現実で水に出会ったとき
- 湧き水や井戸の水を汲む:湧いたばかりの水は、若水やお水取りのように、清めの水として汲まれてきた(下の「日本の縁起」)
- 神社の手水:→ 神社、手水舎の龍は → 龍
- 枕元に水を置く:スピリチュアルでは、寝ているあいだの邪気を吸い取るとされる。朝には飲まずに捨てる
- 水にお湯を足す:日常では避けるものとされる。下の「逆さ水」
- 水回りを整える:風水では、水はお金の流れと重ねられる。きれいな水が滞らずに巡る家は、お金も巡るとされる。→ お金
- 墓石に水をかける:→ 墓
日本の縁起
- 若水:元日の朝、いちばんに汲む水。もとは宮中で立春の日に天皇へ奉った水で、のちに正月の習わしになった。年男が、土地によっては家の女性が、まだ人に会わないうちに汲みに行き、人に会っても口をきかない。汲むときに「黄金の水を汲みます」のような縁起のいい言葉を唱える土地もあった。神棚に供えたあと、年神への供え物や家族の雑煮を作り、口をすすぐ。一年の邪気を除く水とされた
- お水取り:奈良・東大寺二月堂の修二会で、3月12日の深夜から13日の未明にかけて、堂のそばの井戸「若狭井」から観音さまに供える香水を汲む。若狭の遠敷明神が、川で魚を取っていて観音さまのもとへの集まりに遅れ、そのお詫びに清水を湧き出させた、と伝わる。その10日前の3月2日には、福井県小浜市の鵜の瀬で「お水送り」が行われ、送られた水が若狭井に湧くとされる。汲んだ香水は、堂に伝わる「根本香水」に毎年継ぎ足され、根本香水は天平の頃から絶えずに受け継がれてきたとされる
- 逆さ水:水にお湯を足してぬるくすること。亡くなった人の体を清める湯灌では、ふだんと逆の手順をとる「逆さ事」のひとつとして、この順で湯を作る。そのため暮らしの中では、お湯に水を足すのが決まりとされてきた。→ 葬式
- 銭洗い:湧き水でお金を洗うと増えるとされる。→ お金
タロットの水
水は、タロットではカップ(聖杯)の組が受け持つ。カップは感情と愛情の組で、杯は心を満たす水の器として描かれる。以下はウェイト版の絵柄。
- カップのエース:雲から出た手が杯を捧げ持ち、杯からは何本もの水の流れが下の水面へこぼれ落ちている。水面には睡蓮。上からは、聖餅をくわえた白い鳩が杯へ降りてくる。あふれるほど満ちた心、愛情の始まりの札で、澄んだ水があふれる夢と同じことを言っている
- カップのクイーン:海辺の玉座に座る女王が、蓋のついた美しい杯をじっと見つめている。ウェイトはこの女王を「杯の中に幻を見る人」と書き、ただ見るだけでなく動きもして、その動きが夢を養う、と続けた。水の夢を見た朝にこの札が出たなら、夢で見たものを、起きてから少し形にしていい
- カップの5:黒い外套の人が、倒れて中身のこぼれた三つの杯を見下ろしている。背後にはまだ二つの杯が立っていて、その先の川には橋がかかっている。水をこぼす夢の札。こぼれた水より、残っている杯と向こう岸へ渡る橋を見る
世界の象徴としての水
- 上善は水の如し:『老子』の言葉。いちばんの善は水のようなもので、水はあらゆるものを潤しながら争わず、人がいやがる低いところに身を置く、と説く
- ナルキッソス:ギリシャ神話の美少年。泉の水面に映った自分の姿に恋をし、そこを離れられないまま、水仙の花になった。水は心を映す鏡でもある。→ 鏡
- 洗礼:新約聖書で、イエスはヨルダン川でヨハネから洗礼を受けた。水をくぐることは、古い自分を洗い流して生まれ直すしるしとされる。→ 川
二月堂に伝わる根本香水には、天平の頃から毎年、若狭井で汲んだ香水が継ぎ足されてきたとされる。千年を超える年月の水が、ひとつの器に入っている。夢で汲んだ一杯の水も、澄んでいても濁っていても、自分がそれまで汲んできた水に足されていく。

関連する項目
雨・川・海・龍・家・トイレ・黒・溺れる・火事・お金・神社・墓・葬式・鏡
今日の一枚
大アルカナから一枚。
