鏡

鏡は、ありのままを映すもの、そして神様の姿を宿すものとして読まれてきた。夢の鏡に映ったものは、自分がいま自分をどう見ているかを表す。日本では、鏡は天照大御神の御魂として伊勢に祀られ、多くの神社で神前に置かれてきた。割れる鏡、映らない鏡の夢は怖く見えるが、夢占いでは、古い見方がひとつ終わって、自分の姿を新しく見直す時期の知らせとされる。
鏡の夢
鏡の夢が表すのは、自分自身、自分への評価、そして心の奥にある本音。鏡は顔を映す道具なので、夢の中の鏡は「人からどう見えるか」より、「自分が自分をどう見ているか」を映す。
読み分けの鍵は、鏡に何が映っていたか、鏡がどんな状態だったか。澄んだ鏡に自分がはっきり映っていたなら、自分を正しく見られている。曇っていた、割れていた、違うものが映っていたなら、自分の見方がどこかで揺れている。
鏡が割れる夢・割れた鏡の夢
怖い夢として検索されることが多いが、夢占いでは吉夢と読まれることもある。割れるのは、それまで自分を映してきた古い見方や、形だけになった関係。割れたあとに気持ちが軽かったなら、縛られていたものから抜け出す夢。恋愛では、今の関係が大きく変わる節目に見やすい。
手鏡が割れる夢は、身近な人との間の小さな思い込みがほどける夢。破片に自分がいくつも映っていたなら、自分の中にいろいろな顔があることに気づく時期。
鏡に自分が映らない夢
鏡の夢のなかで、いちばん不思議さが残る夢。自分が何をしたいのか、どう見られたいのかが、いま分からなくなっている。周りに合わせてばかりいると見やすい。映らない鏡の前で慌てなかったなら、これから自分の姿を描き直せる白紙の時期でもある。
鏡に映る自分が違う・別人が映る・違う動きをする夢
映っていたのが自分と違う顔だったなら、まだ気づいていない自分の一面が姿を見せている。美しく映っていたなら、自分の魅力を認めていい時期。老けていた、疲れていたなら、休みたい本音。鏡の中の自分が勝手に動いた夢は、頭で決めていることと、心がしたいことがずれている知らせ。
鏡に知らない人・幽霊が映る夢
背後に知らない人が映っていたなら、自分の中の見たくない気持ち、あるいはまだ会っていない縁。幽霊や怖いものが映る夢は、後ろめたさや不安が形になったもので、それを鏡越しに見られたなら、正面から向き合える形になっている。→ 幽霊、知らない人
鏡を見る夢・鏡を磨く夢
鏡を覗き込んで身だしなみを整えている夢は、人前に出る準備が整いつつある夢。曇った鏡を磨いてきれいにする夢は、迷いが晴れていく夢。昔の鏡は青銅で、磨かないとすぐ曇った(下の「日本の縁起」)。
大きな鏡・たくさんの鏡の夢
全身が映る大きな鏡は、自分の全体を見渡す時期。たくさんの鏡に囲まれる夢は、人の目が気になりすぎて、どれが本当の自分か分からなくなっている夢。一枚だけ選んで覗き込んでいたなら、答えはもう出ている。
合わせ鏡の夢
向かい合わせの鏡の中に、自分がどこまでも続いていく夢。同じ悩みをぐるぐる繰り返している知らせ。奥のほうの自分が違って見えたなら、その繰り返しから抜ける道がそこにある。
鏡をもらう・鏡の中に入る夢
鏡をもらう夢は、自分を映し直す機会を授かる夢。神様から鏡を渡される夢は → 神様。鏡の中へ入っていく夢は、ふだんと逆の考え方を試す時期で、アリスが鏡を抜けて逆さまの国へ入っていった話と同じ形をしている(下の「世界の象徴」)。
現実で鏡に出会ったとき
- 鏡を割ってしまった:西洋には、鏡を割ると七年不運が続く、という言い伝えがある。スピリチュアルでは反対に、割れた鏡が悪いものの身代わりになってくれた、と受け取る考え方もある。破片は丁寧に包んで手放す
- 合わせ鏡:丑三つ時に合わせ鏡をすると、奥から十三番目に自分の死に顔が映る、この世でないものが通ってくる、という話が、学校の怪談や都市伝説として広まっている。風水では、向かい合った鏡は気が行き来して落ち着かないとされる
- 古い鏡・中古の鏡:前の持ち主を長く映してきた鏡には、その人の気配が残る、とスピリチュアルでは言われ、磨き清めてから使う人が多い
- 玄関の鏡:風水では、玄関の正面に鏡を置くと入ってくる運を跳ね返すとされ、横の壁に掛けるのがよいとされる。中国の風水には、家の外に向けて掛ける魔除けの八卦鏡もある。→ 家
日本の縁起
- 八咫鏡:三種の神器のひとつ。『古事記』では、天照大御神が天の石屋に籠もったとき、伊斯許理度売命が作った鏡で、戸の外から差し出された。→ 太陽。天孫降臨のとき、天照大御神は孫の邇邇芸命にこの鏡を授け、『日本書紀』では「この鏡を見るときは、私を見るのと同じようにしなさい」と告げたとされる。今は伊勢神宮の内宮に御神体として祀られ、皇居の賢所にはその形代が祀られている
- 神社の鏡:本殿の奥に御神体として鏡を祀る神社も、拝殿の神前に鏡を置く神社も多い。鏡は太陽の光を返すもので、天照大御神の姿を思わせる。「かがみ」から我(が)を取ると「かみ」になる、という言い方もよく聞かれ、神前の鏡に手を合わせるのは、自分の姿を見つめ直すことだと説かれる。神棚の鏡も同じ意味で置かれる。→ 神社
- 鏡餅と鏡開き:鏡餅の名は、丸い形が昔の鏡に似ていることから。八咫鏡をかたどったとも言われる。正月が明けると、多くの土地では1月11日に鏡開きをする。神様に供えた餅に刃物を向けないよう木槌で叩き、「割る」を避けて「開く」と言う。酒樽の蓋を木槌で叩いて開ける祝いの鏡開きも、同じ言葉から
- 鏡は女の魂:「刀は武士の魂」と対で言われてきた。江戸時代の浄瑠璃にも出てくる言葉。昔の鏡は青銅で、磨かなければすぐ曇ったから、曇らせないよう大事に手入れするものだった
- 結婚祝いの鏡:割れ物は「別れ」に通じるとして避ける人がいる一方、姿を映す鏡は、二人の姿を映して末永く、と喜ばれる品でもある。→ 結婚
タロットの鏡
ウェイト版の大アルカナに、鏡を描いた札は無い。ただ、映した光、借りた光を描いた札がある。
- 女教皇:足もとに三日月を置き、二本の柱のあいだに座る。ウェイトはこの札を「借りた光の女王」と呼んだ。自分では光らず、上からの光を静かに映す札で、澄んだ鏡に自分が映る夢と同じことを言っている
- 月:二つの塔のあいだへ続く道の手前で、犬と狼が月を見上げて吠えている。ウェイトは、この道を行く者を導くのは「映した光」だけだと書いた。鏡に違うものが映る、映らない夢を見た日にこの札が出たなら、いまは見えているものを確かめながら進む時期
- 女帝:傍らの盾に、金星の印が描かれている。この印は、美の女神ヴィーナスの手鏡をかたどったものと見立てられてきた。自分の美しさを認める札で、鏡に映った自分が美しかった夢と重なる
世界の象徴としての鏡
- 照魔の鏡:中国・晋の葛洪『抱朴子』には、年を経た物の精は人の姿に化けて人を惑わすが、鏡の中の本当の姿だけは変えられない、と書かれている。そのため山に入る者は、背中に九寸以上の明るい鏡を掛けたという
- 白雪姫の魔法の鏡:グリム童話で、お妃が「世界でいちばん美しいのは誰」と問うと、鏡はいつも本当のことを答えた。嘘をつかない鏡が、物語を動かしていく
- 鏡の国のアリス:ルイス・キャロルが1871年に出した物語。アリスは暖炉の上の鏡を抜けて、文字も道も逆さまの国へ入り、チェスの駒たちと旅をする
天の石屋の前で差し出された鏡を、天照大御神は、自分より尊い神の姿だと思って覗き込んだ。映っていたのは、自分自身の姿だった。夢の鏡に知らない誰かが映って見えた朝も、その顔はたいてい、まだ気づいていない自分の顔をしている。

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