歯

歯が抜ける夢は、自分を支えてきたものが入れ替わろうとしている夢とされる。歯は、ものを噛み、力を込め、人前で笑うときに見えるもの。自信や踏ん張りの象徴で、古くは家族の象徴でもあった。「歯が抜ける夢は身内に不幸がある」という話はここから来ている。けれど夢占いでは、多くの場合、抜けたのは自分の側の古い支えで、その後に来るものを迎える夢として読む。読み分けの鍵は、どの歯が、どんなふうに抜けたか。痛かったか、血が出たか、抜けたあとに何が残ったか。
歯が抜ける夢の意味
夢占いでの歯は、生きる力と、自分を守る構え。歯を食いしばる、歯が立たない、と言うように、歯は踏ん張る場所でもある。抜ける夢は、その構えが緩んでいる、あるいは今の構えがもう合わなくなっている知らせ。
読み分けの鍵は三つ。
- 痛みと血:痛くなかった、血が出なかったなら、手放す準備がもうできている。痛かったなら、まだ惜しいものを手放そうとしている
- 何本、どこが:1本か、大量か。前歯か、奥歯か、上か下か(下の「どの歯が抜けたか」)
- 抜けたあと:隙間が気になったか、新しい歯が見えていたか
状況ごとの読み
歯が1本抜ける夢
いちばん多い形。ひとつの区切りの夢で、終わりかけの関係や、やめどきの習慣がひとつある。痛くなく、ころりと抜けたなら、自然に離れていくもの。抜けた歯を手のひらで眺めていたなら、それが何だったかを自分でも分かっている。
前歯が抜ける夢
前歯は、人前で笑うときにいちばん見える歯。前歯の夢は、人からどう見られているかへの気がかりを表す。話す、笑う、自分を見せることに、今ためらいがある。上の前歯なら目上の人、下の前歯なら身近な人との間で、言い方に気をつかっている時期。
奥歯が抜ける夢
奥歯は、力を込めて噛みしめる歯。奥歯の夢は、これまで我慢して支えてきたことが限界に来ている知らせ。長く背負ってきた役目から、降りるときが近い。
大量に抜ける・全部抜ける夢
口の中が抜けた歯でいっぱいになる夢は、怖いが、夢占いでは暮らしが大きく入れ替わる夢。困っている最中に見たなら、古いものが一度に出ていく開運の夢ともされる。「大量に歯が抜ける夢は宝くじ」と言われるのもこの読みから。→ 宝くじ
血が出る夢
血は、その変化に払う心の代価。血が出た夢は、手放すものに未練がある、あるいは変わることへの怖さが強い。血が出なかったなら、変化はすんなり進む。→ 血
歯が欠ける・折れる・割れる夢
抜けるのではなく欠ける夢は、全部は失わないが、傷がつく夢。小さな行き違いや、プライドの傷。欠けたところを舌で確かめていたなら、そのことが頭から離れていない。犬歯や八重歯が折れたなら、自分の尖ったところ、攻めの力が折れかけている。
歯がボロボロになる・溶ける夢
歯が崩れていく夢は、疲れと自信の目減り。一度に失うのではなく、少しずつ削られている感覚が、形になって出ている。ボロボロの歯が最後に抜けて、すっきりしたなら、疲れの出口は近い。
歯がぐらぐらする夢
まだ抜けていない夢は、迷いの最中の夢。手放すか、持ち続けるか、決めきれずにいる。自分で抜いたなら、決めるのは自分だと分かっている。
新しい歯が生える夢
吉夢。抜けたあとに新しい歯が生えてくる夢は、転機を越えて、次の支えが育ってくる知らせ。大人になってから生える夢なら、遅れてきた力がこれから出てくる。赤ちゃんの歯が生える夢は、見守っているものが育つ夢。→ 赤ちゃん
歯を磨く夢・歯医者の夢
歯を磨く夢は、身の回りと言葉を整えたい気持ち。汚れがよく落ちたなら、気がかりが晴れる。歯医者で治してもらう夢や入れ歯の夢は、自分だけで抱えずに、人の手を借りて立て直す時期にいる知らせ。
何度も見る
同じ歯が抜ける夢が続くのは、同じ一つの変わり目の前に、ずっと立っているから。どの歯だったかを書き留めておくと、何を手放しかけているのかが見えてくる。
どの歯が抜けたか
2世紀のギリシアの夢解きアルテミドロスは、『夢判断の書』の中で、口を一軒の家、歯をその家に住む人々と見る読み方を伝えている。
- 上の歯:家の中で重い立場の人。夢占いでは、父母や目上の人
- 下の歯:それより軽い立場の人。夢占いでは、きょうだいや年下の人
- 右と左:右の歯は男、左の歯は女
- 前歯・犬歯・奥歯:前歯は若い人、犬歯は中ほどの年の人、奥歯は年長の人
歯は家族。そう見ると、歯の夢は、自分が誰のことを気にかけているかを映す鏡になる。上の歯が抜けたなら、親や目上の人のことが、心のどこかに引っかかっている。
身内に不幸があるという読みについて
「歯が抜ける夢 人が死ぬ」「身内の不幸」と検索される読みは、古い夢の書にある。中国の『周公解夢』には「歯が自然に抜ける者は、父母に凶」という句がある。アルテミドロスも、抜けた歯の位置から家の誰を失うかを読んだ。
けれど同じ『周公解夢』には、「抜けた歯がまた生える者は、子孫が栄える」という句も並んでいる。歯は失うだけのものではなく、生え変わるもの。今の夢占いでは、夢の中の歯は、家族の誰かの身の上を告げるものではなく、家族を思う自分の気持ちの形として読まれる。気になるなら、しばらく家族に声をかける機会を増やせばいい。悪い夢は人に話すと流れる、という言い伝えは 母親、悪夢をよい夢に変える観音と獏は 父親 の項目にある。
日本の言い伝え
- 抜けた乳歯を投げる:上の歯が抜けたら縁の下へ、下の歯が抜けたら屋根の上へ投げる。新しい歯が、古い歯のあるほうへ向かってまっすぐ伸びるように、というまじない。投げるときに「ねずみの歯と取り替えて」「ねずみの歯のように丈夫に」と唱える土地が多い。一生伸び続けるネズミの歯にあやかった。上下の投げ先が逆の土地や、雨どいの落ち口に埋める土地もある。→ ネズミ、家
- 歯固め:正月に、鏡餅や大根、押し鮎などの固いものを食べて長寿を願う行事。「歯」はもともと「齢(よわい)」を表し、歯を固めることは齢を固めて生まれ直すことだった。佐渡では、赤ちゃんの百日の食い初めを歯固めと呼んだ
- お歯黒:江戸時代、嫁いだ女性は歯を黒く染めた。→ 黒
遠いスペインでは、抜けた乳歯を枕の下に置くと、ネズミのペレスが取りに来て贈り物と替えていく。1894年、乳歯の抜けた8歳の国王アルフォンソ13世のために、神父ルイス・コロマが書いた話が広めた。屋根へ投げても、枕の下に置いても、抜けた歯はネズミの丈夫な歯と取り替えてもらうものだった。
タロットでは
ウェイト版には、歯そのものが描かれた札は無い。読みが重なるのは次の2枚。
- 力:女性が、ライオンの顎をそっと閉じている。力ずくではなく、花の鎖で獣を従えている。ウェイトは、古い図柄では女性が口を開けているとも書いている。歯を食いしばる夢のあとにこの札が出たなら、噛みしめて耐える力より、口を閉じて静かに収める力の時期
- 塔:雷に打たれた塔が崩れ、二人の人が落ちていく。歯がボロボロに崩れる夢と同じ像をもつ札。崩れるのは、もう自分を支えていない古い構え
歯が抜ける夢を見た朝は、子どもの頃、抜けた歯を握って屋根を見上げた日を思い出していい。あのとき投げた歯のあとには、ちゃんと次の歯が生えてきた。

関連する項目
血・ネズミ・家・宝くじ・赤ちゃん・母親・父親・祖母・祖父・黒・落ちる・爪・髪の毛
今日の一枚
大アルカナから一枚。
