雪

雪は、すべてを白く覆って静め、春には水になって実りを連れてくるものとして読まれてきた。音を吸い込み、道も屋根も同じ白に変えて、世界をいったん休ませる。夢の中の雪は、心が静まって、何かが覆われたまま育っている時間を表し、夢占いでは運気が高まる知らせとされることが多い。日本では「雪は豊年の瑞(しるし)」と言い、新年に降る雪を、その年の実りの前触れとして祝ってきた。
雪の夢
雪の夢が表すのは、浄化、静けさ、休息、そして積み重なっていく運。雨が流し去る水なら、雪はとどまる水。すぐには流れず、覆って、しばらく待ってから解けていく。
読み分けの鍵は二つ。
- 雪の降り方と量:静かに舞う雪なら、気持ちが落ち着いて、運が少しずつ積もっていく時期。吹雪や大雪なら、自分でも扱いきれないほどの出来事や気持ちに囲まれている
- 自分が寒かったか、楽しかったか:雪の中で凍えていたなら、心が冷えて人の温かさを求めている。雪にはしゃいでいたなら、無邪気な気持ちが戻ってきている
雪が降る夢
しんしんと降る雪を眺める夢は、心が澄んで、恋愛や人との縁に恵まれる時期。雪の粒が大きく、ゆっくり舞っていたなら、喜びごとがゆっくり近づいている。吹雪の中を進む夢は、厳しい状況にいるが、足を止めずにいることの表れ。
雪が積もる夢・一面の雪景色の夢
降った雪が積もっていく夢は、運や努力が積み重なっていく吉夢。積もるほど、実りも大きい。一面の雪景色の清めの読みは → 白
季節外れの雪・夏の雪の夢
春や夏に雪が降る夢は、思いがけない幸運の知らせ。予定していなかった出会いや出来事が、流れを良いほうへ変える。暑い季節に雪を見て心地よかったなら、張りつめていた気持ちが冷めて、落ち着いて考えられるようになる。
雪に埋もれる夢・雪崩の夢
雪に埋もれて身動きがとれない夢は、抱えているものの重さに、心が止まってしまっている知らせ。それでも雪の下は、外の寒さから守られた場所でもある。今は無理に掘り出そうとせず、力が戻るのを待っていい。
雪崩に巻き込まれる夢は、積もり積もった不満や疲れが一度に崩れる夢。助かった、抜け出せたなら、崩れたあとに身軽になれる。雪山そのものの夢は → 山
雪道を歩く夢・雪道を車で走る夢
足跡のない雪道を歩く夢は、誰も通っていない道を自分で開いていく夢。一歩ずつ確かめて進めば、跡はそのまま自分の道になる。雪道を車で走る夢、スリップしそうになる夢は、急ぎすぎを知らせている。ゆっくり走り通せたなら、その慎重さで間に合う。→ 車
雪が解ける夢・雪解け水の夢
雪が解けていく夢は、長く凍っていた関係や、動かなかった物事が、ゆるみはじめる夢。こじれていた相手との雪解けを表すことも多い。解けた水が澄んで流れていたなら、その水はもう次の実りを潤しはじめている。→ 水
雪だるまを作る夢・雪合戦の夢
雪だるまを作る夢は、小さな働きかけが少しずつ大きくなっていく夢。人と一緒に作っていたなら、その相手との仲が深まる。雪合戦の夢は、遠慮なくぶつかり合える関係の表れ。笑っていたなら、軽い言い合いがかえって距離を縮める。
家の中に雪が降る夢
屋根の下なのに雪が降る夢は、身近な人との間に、冷たさや寂しさを感じている知らせ。静かに降っていてきれいだったなら、家の中が落ち着いて整う夢として読む。→ 家
雪女が出てくる夢
白い着物の女が雪の中に立つ夢は、美しさと怖さの両方に惹かれている夢。約束や秘密を抱えている時期に見やすい。雪女の話は下の「日本の言い伝え」。
現実で雪に出会ったとき
- 雪虫が飛んでいた:北海道では、白い綿をまとった小さな虫が舞うと、雪が近いと言われてきた。正体はトドノネオオワタムシというアブラムシの仲間
- 冬に雷が鳴った:日本海側では、雪の降り出す前に鳴る雷を「雪起こし」と呼ぶ。雷が眠っていた雪を起こす、という名。北陸では寒鰤の漁の始まりに重なるので「鰤起こし」とも言う。→ 雷
- 新年に雪が降った:「雪は豊年の瑞」。その年の実りの前触れとされてきた(下の「日本の縁起」)
- 結婚式の日の雪:ブライダルの世界では、雪の上に並んで残る二人の足跡を、二人が歩んできた道と見立て、後戻りせずに前へ進んでいけるしるしとするジンクスがある。→ 結婚
日本の縁起
- 雪は豊年の瑞:大雪の年は豊作になる、ということわざ。山に積もった雪が春に解けて田を潤すので、水に困らない。『万葉集』には、天平18年の正月に大雪が降ったとき、葛井諸会(ふじいのもろあい)が詠んだ「新しき年の初めに豊の年しるすとならし雪の降れるは」がある。新年の雪は豊年のしるしらしい、という歌
- いや重け吉事:『万葉集』の最後の一首は、大伴家持が因幡の国庁で、正月一日の宴に詠んだ「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重け吉事」。今日降る雪のように、よいことが重なれ、という祝いの歌
- かまくら:秋田県横手市で、もとは小正月の行事として受け継がれ、今は毎年2月15日と16日に行われる、約450年続く行事。もとは町人が井戸のそばに水神様の祠を作って、よい水に恵まれるよう祈ったことと、武家の火祭り、子どもの雪遊びが重なって今の形になった。雪室の奥には今も水神様を祀り、家内安全・商売繁盛・五穀豊穣を願う
- 雪うさぎ:盆の上に雪を丸め、ゆずり葉を耳に、南天の赤い実を目にして兎の形にしたもの。南天は「難を転ずる」、ゆずり葉は古い葉が新しい葉に譲って落ちるので、代々続く家の縁起とされる。→ うさぎ
日本の言い伝え
雪女は、雪の深い土地を中心に、各地で語られてきた雪の精。よく知られているのは、小泉八雲が『怪談』(1904年)に書いた話で、武蔵国西多摩郡調布の農夫から聞いた、その村の言い伝えとされる。
吹雪の夜、木こりの茂作と若い巳之吉が、渡し守の小屋に逃げ込む。夜中に白い女が現れ、茂作に息を吹きかけて凍え死なせる。巳之吉には「おまえは若くてきれいだから助ける。今夜のことを誰かに話したら命はない」と言い残して消える。翌年の冬、巳之吉はお雪という娘に出会って妻にし、やがて十人の子に恵まれる。ある夜、巳之吉が妻にあの晩の話をすると、お雪は「それは私だった」と言い、子どもたちのために命は取らずに、白い霧になって煙出しから消えていく。→ 白、幽霊
タロットの雪
ウェイト版で雪がはっきり描かれている札は多くない。
- ペンタクルの5:二人の貧しい人が、雪の中を歩いていく。一人は松葉杖。すぐ後ろには、ペンタクルを描いたステンドグラスの教会の窓が明るい。雪に埋もれる夢の札。凍えているときにも、灯りはすぐそばにある
- 隠者:雪をかぶった峰の頂に、灯りを掲げた老人がひとり立つ。雪の静けさの中で、自分の内側を照らす札
- 審判:天使のラッパに応えて人々が起き上がる、その背後に白い雪山が連なる。雪が解けるように、止まっていたものが目覚める札
雪の夢を見た日に ペンタクルの5 が出たなら、振り返って窓の灯りを探していい。審判 が出たなら、雪解けはもう始まっている。
世界の象徴としての雪
- ホレおばさん:グリム童話。井戸の底の国に住むホレおばさんのもとで、働き者の娘が毎日羽布団をよく振ると、羽根が舞って地上に雪が降った。娘は帰りぎわに金の雨を浴びて家に戻る。ドイツのヘッセン地方では、雪が降ると「ホレおばさんがベッドを整えている」と言う
- 瑞雪兆豊年:中国のことわざで、時宜にかなった雪は豊作の兆し。日本の「雪は豊年の瑞」と同じ願い
- 天から送られた手紙:雪の結晶を研究し、世界で初めて人工の雪を作った中谷宇吉郎は、著書『雪』(1938年)で「雪の結晶は、天から送られた手紙である」と書いた。結晶の形から、雪が生まれた空の様子が読める
横手のかまくらの奥には、今も水神様が祀られている。人は雪で室を作り、その雪がやがて解けてよい水になるよう祈ってきた。夢に降った雪も、積もっている間は覆って守り、解けたときに、次の実りを潤す水になる。

関連する項目
今日の一枚
大アルカナから一枚。
