猿

猿は、魔を去らせ、人に勝たせる神の使いとして読まれてきた。「さる」は「去る」に、「まさる」は「魔去る」「勝る」に通じ、日本では山の神のお使いとして都の鬼門を守り、馬を病から守ってきた。そして猿は、人にいちばん近い顔と手を持ち、人のまねをする生き物でもある。夢の猿は、自分や身近な誰かの知恵と悪知恵を映して出てくる。
猿の夢
夢占いでは、猿は知恵、器用さ、そして人づきあいの駆け引きの象徴。多くの読みでは、ずる賢い人や、調子のいいことを言う人、あるいは自分の中のちゃっかりした部分への注意として読まれる。ただ、猿が神の使いでもあることを思えば、猿の夢は、その駆け引きを見抜ける目が自分に備わった夢でもある。
読み分けの鍵は、猿が自分に何をしてきたか。まねをしてきた、からかってきたなら、身近な誰かが自分をよく見ている。自分に似た振る舞いの猿だったなら、それは自分自身の姿。なついてきた、そばで遊んでいたなら、人の輪の中で好かれている吉夢になる。
猿に襲われる・噛まれる夢
猿に襲われる夢は、自分より強い立場の人や、口のうまい相手から押し込まれそうになっている知らせ。噛まれて痛かったなら、その相手の言葉にもう一度目を通しておく。けれど夢の中で相手の正体が猿だと分かっていたこと自体が、見抜けている証拠でもある。
猿を追い払えた、戦って勝ったなら、神猿の「まさる」の通り、魔が去り、勝る夢。
猿に追いかけられる夢
逃げても逃げてもついてくる猿は、うやむやにしている小さな嘘や、見て見ぬふりをしていること。振り返って猿の顔を見たら、思っていたより小さかった、という夢に変わったなら、その件はもう片づく。→ 追いかけられる
子猿・親子の猿の夢
子猿は、人気と可愛がられる運の夢。親子の猿が寄り添っていたなら、家族の絆や、面倒を見ている相手とのつながりが深まる。子猿を抱いていたなら、守りたい人ができる。→ 赤ちゃん
猿がなつく・猿を飼う夢
猿がなついてきた夢は、周りとの信頼が強まる吉夢。猿を飼う夢は、器用さや機転を自分のものにしている夢で、仕事で工夫が報われる。ただ、飼っている猿が言うことを聞かなかったなら、自分の中の気まぐれに振り回されかけている。
白い猿の夢
猿の夢のなかでいちばんの吉夢。白は神の使いの色で、白い猿は守りと導きの知らせ。白い猿に襲われる夢だったなら、目上の人や大きな存在から、少し厳しい形で気づきを受け取る。→ 白
たくさんの猿・猿の群れの夢
群れの猿は、にぎやかな人間関係。群れが遊んでいるだけなら、仲間に恵まれる時期。家の中を猿の群れが荒らしていたなら、周りの噂や口出しに、自分の暮らしがかき回されている。→ 家
猿を殺す・死んだ猿の夢
ずる賢さやごまかしと縁が切れる夢。自分の中のちゃっかりした癖を手放す時期でもある。死んだ猿を見て悲しかったなら、手放すものに少し名残がある。
猿夢という話
「猿夢」は、夢の中の電車を舞台にした、ネットで語られてきた怖い話。猿の夢そのものとは別の話で、詳しくは → 電車
現実で猿に出会ったとき
- 山や神社の近くで野生の猿に出会った:山の神の使いとされる猿なので、「魔が去る」縁起に当てはめて、厄が一つ落ちた印として受け取れる。親子の猿なら、家族の守りの印
- 朝、猿を見かけた:その日の始まりに魔が去る、と受け取る人が多い
- 猿の置物・お守りを置く:日吉大社や日枝神社の神猿のお守り、八坂庚申堂のくくり猿など。魔除けと勝負の運を願って、玄関や机に置く
日本の縁起
- 日吉大社の神猿(まさる):滋賀・坂本の日吉大社では、猿を「神猿(まさる)」と呼んで神の使いとしている。祭神の大山咋神が宿る比叡山には昔から猿が多く、平安京に都が移ったとき、比叡山が都の北東の鬼門にあたることから、日吉大社は鬼門封じの社とされた。そのころから猿は「魔が去る」「勝る」に通じる魔除けの印になった。西本宮の楼門の軒下四隅では、屋根を支える「棟持猿」が参拝者を見守る。境内には、年老いた神猿が死期を悟ると自ら入るという「猿塚」もある。→ 神社、神様、山
- 庚申と三猿:60日に一度巡る庚申(かのえさる)の日の夜、人の体にすむ三尸(さんし)の虫が、眠っている間に抜け出して、その人の悪事を天帝に告げに行く、という道教から来た信仰がある。告げられると寿命が縮むので、人々はその夜を眠らずに過ごした。これが庚申待で、村々に庚申塔が建てられた。庚申塔には「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿がよく彫られている。悪いことを見ず、言わず、聞かなければ、虫に告げられることもない。天孫降臨の道案内をした猿田彦も、庚申待に祀られる神の一人。→ 迷う
- くくり猿:京都・八坂庚申堂には、手足をくくられた布の猿のお守りが色とりどりに吊るされている。欲のままに動く猿の手足をくくって、自分の欲を一つ戒め、その代わりに願いを一つ預ける
- 日光東照宮の三猿:神厩舎(神馬の厩)の長押の上に、猿の一生を描いた8面の彫刻がある。母猿と子猿に始まり、2面目が有名な三猿で、幼いうちは悪いものを見せず、言わせず、聞かせずに育てる、という意味とされる。そのあと猿は独り立ちし、空を見上げ、つまずき、恋をし、夫婦になり、最後の面で子を宿して、また最初の母子へ戻る。→ 馬
- 猿は馬の守り:猿は厩の神とされ、馬を病や火から守ると言われた。猿まわしは、もとは厩の前で猿を舞わせてお祓いをする厩祈祷だった
- 申年の赤い下着:病が「去る」の縁起。→ 赤
- 申:十二支の9番目。2016年が申年で、次は2028年
タロットの猿
ウェイト版に猿が描かれた札は無い。猿の器用さ、勝る力、三猿の目隠しに重なる札を挙げる。
- 魔術師:卓の上に杯、剣、ペンタクル、ワンドを並べ、片手の杖を天へ、もう片方の手を地へ向けて立つ若者。道具を使いこなす器用さと機転の札で、猿を飼う夢や、猿のように身軽に立ち回る夢の日に出たなら、その工夫は形になる
- 戦車:星の天蓋の車に乗った鎧の若者を、黒と白の二頭のスフィンクスが引く。勝利の札。猿を追い払う夢や、戦って勝つ夢のあとに出たなら、神猿の「勝る」がそのまま札になっている
- ソードの2:目隠しをした女性が、胸の前で腕を交差させて二本の剣を掲げ、背後に海と三日月。見ないことで心を静める札で、「見ざる」に重なる。猿にからかわれる夢のあとに出たなら、今は相手の挑発を見ずに、自分の均衡を守る時期
世界の象徴としての猿
- 孫悟空:中国の『西遊記』で、石から生まれ、雲に乗って天を暴れ回った猿。天の果てまで飛んだつもりが、そこは釈迦の手のひらの上だった。その後、三蔵法師を守って天竺への旅をやり遂げる。いたずらな知恵が、守る力に変わる話
- ハヌマーン:インドの叙事詩『ラーマーヤナ』の猿の勇者。海を一跳びで越え、傷ついた仲間のために薬草の生える山ごと運んできた。忠義と力の象徴として、今も広く祀られている
- トート:古代エジプトの知恵と文字の神。トキの頭の姿のほか、ヒヒの姿でも表された。猿は、書くこと、数えること、月の満ち欠けを司る知恵の側にいた。→ 月
- 三猿:日光の三猿は海を渡って、英語では「three wise monkeys(三匹の賢い猿)」と呼ばれている
日光の神厩舎で、目と口と耳をふさいでいた幼い三猿は、次の面で独り立ちし、その先で空を見上げる。夢の猿がこちらをまっすぐ見ていたなら、それはもう、目を開けていい年ごろの猿。

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馬・山・神社・神様・白・赤・月・家・赤ちゃん・迷う・電車・追いかけられる・犬・狐
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