風

風は、目に見えないまま、物を運び、動かすものとして読まれてきた。姿はないのに、木を揺らし、雲を流し、船を進め、遠くの便りを届ける。夢の風は、自分のところへ何かが運ばれてくる流れか、自分が運ばれていく流れを表し、夢占いでは運気そのものとされる。心地よい風なら追い風の時期、強い風なら流れが大きく変わる時期。日本では、風は神の息から生まれたとされ、国を救った「神風」から風鈴の音まで、見えない力の通り道として迎えられてきた。
風の夢
風の夢が表すのは、運の流れ、変化、そして人から届く知らせ。風は向きを変えるので、今いる場所の空気が入れ替わるときに見やすい。
読み分けの鍵は二つ。
- 風の強さ:そよ風なら、物事は穏やかに進む。強風や突風なら、気持ちか環境が、大きく揺さぶられている
- 自分がどう受けたか:風を気持ちよく浴びたのか、踏ん張ったのか、飛ばされたのか、風に乗ったのか
心地よい風・そよ風を感じる夢
風の夢のなかでいちばんの吉夢。体も気持ちも整っていて、運が素直に巡っている。頬をなでる風の感触が目覚めても残っていたなら、その軽さのまま動いていい。花の香りや潮の匂いを運んでくる風なら、うれしい知らせが近くまで来ている。
強風の夢
吹き荒れる風の中に立つ夢は、胸の内で感情が渦巻いている夢。周りの環境が慌ただしくなる知らせでもある。強い風の中でも倒れずに立っていたなら、揺さぶられても自分の軸は持っていかれない。
家の中に風が吹き込む夢・窓を閉める夢
家の中まで強い風が入り込む夢は、暮らしや家族のなかに外から変化が入ってくる夢。慌てて窓を閉めた夢は、今は心をかき乱されたくない、落ち着いて考える時間がほしいという気持ちの表れ。突風で窓ガラスが割れた夢なら、守ってきた考えがひとつ、外の空気に触れて変わる。→ 家
窓を開けて風を入れる夢・カーテンが揺れる夢
自分から窓を開けて風を通す夢は、新しいものを受け入れる準備ができている夢。カーテンがふわりと揺れていたなら、人との縁や知らせが静かに届きはじめている。
風に飛ばされる夢
強い風に自分の体ごと持っていかれる夢は、自分ではどうにもならない流れに巻き込まれている夢。人の言葉や誘いに流されやすい時期なので、大事な決めごとは一度立ち止まってから。持ち物が飛ばされた夢は、それに向けていた気持ちを手放す時期。人が飛ばされていくのを見た夢なら、その人との距離が変わっていく。
風に乗って飛ぶ夢
風を受けて空へ浮かぶ夢は、追い風に乗る夢。自分の力だけでなく、人や時の運に押し上げられて、物事がすいすい進む。→ 飛ぶ
竜巻・つむじ風の夢
渦を巻く風が迫る夢は、周りが騒がしく、人間関係や恋愛が揺れやすい時期の夢。けれど竜巻は、巻き上げたものを別の場所へ運ぶ風でもある。竜巻から逃げて助かった夢なら、混乱の時期を抜けて、景色の違う場所に立てる。黒い竜巻は、自分の中の不安が形になったもの。→ 黒
足もとで小さなつむじ風がくるくる回る夢は、何かが自分のそばを通っていった夢。気にかけてくれている存在の気配として受け取っていい。
台風の夢
大きな嵐が近づいてくる夢は、身の回りの状況が一度大きくかき回される夢。台風が過ぎたあとの澄んだ空を見た夢なら、その先はすっきり晴れる。雨の読みは → 雨
神社で風が吹く夢
参道や拝殿の前で風が吹き抜ける夢は、迎え入れられている夢。願いが届いている。→ 神社
風神が出てくる夢
風袋を担いだ風神の姿を見る夢は、流れを動かす大きな力が、自分の近くに来ている夢。雷神と並んでいたなら、変化は音を立てて一気にやってくる。→ 雷
現実で風に出会ったとき
- 神社で風が吹いた:歓迎と、願いが届いたしるしとされる。→ 神社
- お墓参りで風が吹いた:スピリチュアルでは、故人からの返事と読まれる。手を合わせたときにふっと風が通ったなら、来てくれたことが伝わっている。→ 墓、亡くなった人
- つむじ風を見た:スピリチュアルでは、神様や龍神が通っていったしるしとされる。→ 龍
- 春一番が吹いた:立春から春分までのあいだに初めて吹く、強い南寄りの風。もとは壱岐の漁師たちが、春先の荒れる南風を戒めて呼んだ名が広まったと言われる。季節の扉が開く風で、始めたいことに手をつける合図にする人も多い
日本の縁起
- 風の神:『古事記』『日本書紀』で、風の神は級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長戸辺命(しなとべのみこと)。イザナギが朝霧を吹き払った息から生まれたとも伝わり、「しな」は長い息のこと。奈良の龍田大社では、この二柱を天御柱命・国御柱命としてまつる
- 神風:伊勢神宮の内宮の別宮、風日祈宮(かざひのみのみや)には、風の二柱がまつられている。蒙古襲来のとき猛風を起こして国を救ったとされ、正応6年(1293年)に「宮」の名を賜った。いまも毎年5月14日と8月4日に、風雨の災いがなく五穀が実るよう祈る風日祈祭が行われる。古くから「神風の」は伊勢にかかる枕詞でもあった
- 二百十日と風の盆:立春から数えて210日目のころは、稲の実りの前に大風が来る厄日とされ、各地で風を鎮める風祭りが行われてきた。富山・越中八尾の「おわら風の盆」も、この時期に風の無事と豊作を願う祭り
- 風車(かざぐるま):風を受けてくるくる回ることから、運が回る、まめに働けるという縁起物。福島の会津では、起き上がり小法師、初音と並ぶ「会津三縁起」のひとつ。いつも元気に働けるように、商売が繁盛するようにと、正月に買い求めて神棚に飾る
- 風鈴:もとは中国で、竹林に吊るして音で吉凶を占った占風鐸。日本では寺の軒の四隅に下げる風鐸になり、その音の届く範囲には悪いものが入らないとされた。夏の軒先の風鈴にも、魔除けの役目が受け継がれている
- 風の便り:どこからともなく伝わってくる噂や消息。人の知らせは、風が運んでくるものだった
タロットの風
ウェイト版で風が目に見える形で描かれている札は多くない。近代のタロットでは、ソードの組が四元素の風にあてられる。
- ソードのナイト:白い馬に乗った騎士が、剣を振りかざして全速で駆けていく。空には雲がちぎれて流れ、木々は強い風にしなっている。強風の夢と同じく、物事が一気に動く札。風に飛ばされる夢を見た日にこの札が出たなら、飛ばされる側ではなく、風を切って進む側に回れる
- 愚者:崖のふちを、空を見上げたまま軽い足取りで歩く若者。黄金の夜明け団の対応では、愚者はヘブライ文字のアレフと、風の元素にあてられる。心地よい風の夢のあとにこの札が出たなら、身軽なまま一歩を踏み出していい
世界の象徴としての風
- アイオロスの風の袋:ホメロスの『オデュッセイア』で、風を治めるアイオロスは、帰郷を急ぐオデュッセウスに、逆風をすべて閉じ込めた革袋を渡した。故郷の島が見えたところで、宝が入っていると思い込んだ部下たちが袋を開け、飛び出した風に船は吹き戻された
- 聖書の風:ヘブライ語のルーアハは、風と息と霊を一つの言葉で表す。ヨハネによる福音書には「風は思いのままに吹く」とあり、使徒言行録では、激しい風が吹いてくるような音とともに聖霊が降った
- 風神雷神図屏風:俵屋宗達が描いた風神は、大きな風袋を両手で担いで、金地の空を駆けている。→ 雷
宗達の風神も、アイオロスも、風を袋に入れて持ち歩いている。袋の口を開けるのは、神のこともあれば、中身を知らない人間のこともあった。夢の中で吹いた風も、どこかで誰かが袋の口を開けたもの。頬に心地よく当たったなら、その袋は、自分の背中を押すために開けられている。

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