牛

牛は、急がず、重い荷を黙って運ぶ生き物として読まれてきた。田を耕し、車を引き、乳で人を養う。歩みは遅いが、止まらない。夢では、自分がこつこつ積み上げてきた力と、そこから生まれる実りの姿で出てくる。日本では天満宮の神様のお使いで、撫でれば学びと体を守ってくれる。信濃には、牛に導かれて寺にたどり着いた人の話がある。牛の夢は、自分の歩みがどこへ向かっているかを映している。
牛の夢
夢占いでは、牛は財運、忍耐、地道な努力、健康、そして暮らしの豊かさの象徴。牛の夢は吉夢とされることが多く、特に、時間をかけて取り組んできたことが実を結ぶ前に見やすい。牛の夢を見て宝くじを買う人もいる。→ 宝くじ、お金
読み分けの鍵は、その牛が落ち着いていたか、暴れていたか。草を食む牛、ゆっくり歩く牛、こちらに寄ってくる牛は、積み上げてきたものが実りに変わる知らせ。暴れる牛、突進してくる牛は、自分の中にたまった力や怒りが、出口を探している知らせになる。どちらも、力そのものはもう自分の中にある。
白い牛・黒い牛・茶色い牛の夢
- 白い牛:牛の夢のなかでもとりわけ清らかな吉夢。神仏の乗り物として描かれることの多い白い牛は、守られている時期と、願いの成就を表す。→ 白
- 黒い牛:揺るがない力と、蓄えの夢。仕事で粘り強く取り組んできたことが、目に見える成果になる。怖かったなら、その力の大きさに自分がまだ慣れていない。→ 黒
- 茶色い牛・白黒の牛:暮らしに根ざした豊かさ。家族の健康や、毎日の食卓が満ちていく知らせ
牛に追いかけられる・襲われる夢
逃げている相手は、自分が先延ばしにしてきた仕事や責任。牛の歩みは遅くても、止まらずについてくる。追いつかれて角で突かれたなら、もう腰を据えて取りかかる時期。逃げ切れたなら、その件はひとまず自分の手で片づけられる。→ 追いかけられる
牛が暴れる夢・闘牛の夢
ためこんだ怒りや焦りが、夢の中で牛の形をとっている。暴れる牛をなだめられたなら、自分の気持ちを自分で扱えている。闘牛を見ていた夢は、周りの競争に気を取られている知らせ。牛どうしが角を突き合わせたまま、どちらも倒れずに分かれたなら、今の張り合いは勝ち負けをつけずに収めていい(下の「牛の角突き」)。
牛に乗る夢
目標まで、自分のペースで着実に近づいている吉夢。牛の背で揺られて安心していたなら、無理に急がなくても届く。禅の十牛図には、牛に乗って笛を吹きながら家へ帰る場面がある(下の「世界の象徴としての牛」)。
牛を探す・見失う夢
なくした牛を探して歩き回る夢は、自分の本当にやりたいことを探している夢。足跡を見つけたなら手がかりはもう近くにあり、牛の姿が見えたなら、答えはすでに見えている。
子牛の夢・牛の出産の夢
新しい実りの芽。始めたばかりの仕事や、育ちはじめたお金の流れ。牛が子を産む夢は、長く準備してきたことが形になる知らせで、無事に生まれた子牛が立ち上がったなら、その実りはしっかり根づく。→ 出産
たくさんの牛・牧場の夢・牛を飼う夢
財が蓄えられていく夢。牧場に牛がたくさんいて、のんびり草を食んでいたなら、財運と家庭運がそろって上向く。牛を飼う夢は、責任を引き受ける準備ができている知らせ。
牛乳・牛肉の夢
牛乳を飲む夢は、愛情と養いの夢。誰かに大切にされている、あるいは自分が人を支えられる時期。牛乳をこぼしたなら、疲れがたまっていて、自分を労わる番が来ている。牛肉を食べる夢は、活力と金運の夢で、おいしく食べられたなら、体も運も満ちてくる。
神社で牛を見る夢
天満宮の撫で牛が出てくる夢は、学業と仕事の後押し。試験や資格の前に見たなら、積んできた勉強が報われる。撫で牛を撫でていたなら、撫でた場所が、今いちばん守ってほしいところ。→ 試験、神社
牛が死ぬ夢
ひとつの努力が区切りを迎える夢。長く続けてきた仕事や役目を終える時期で、次の畑を耕しはじめるところ。お盆のころに牛の夢を見たなら、ゆっくり帰っていく人を見送る形とも重なる(下の「日本の縁起」の精霊馬)。
現実で牛に出会ったとき
- 牛を見かけた・牛と目が合った:スピリチュアルでは、焦らなくていいという知らせと読まれる。急いでいた計画を、一度自分の歩幅に戻す
- 天満宮で撫で牛に触れた:頭を撫でて学業の成就を、体の悪いところと同じ場所を撫でて回復を願う。北野天満宮では、撫でて願うのが昔からの作法とされる
- 牛の置物をもらった:撫で牛にあやかって、家に置いて撫でながら願う人も多い。丑年の干支の置物として飾る家もある
日本の縁起
- 天満宮の撫で牛:天満宮の神様、菅原道真は、承和12年(845年)乙丑の年の生まれ。亡くなったとき「牛の行くところにとどめよ」と言い残し、亡骸を乗せた牛車の牛が伏して動かなくなった場所に葬られた。そこが今の太宰府天満宮とされ、境内の牛の像の多くが座った姿なのはこの話による。北野天満宮では、江戸時代から「一願成就のお牛さま」と呼ばれる臥牛が信仰されている。→ 神様
- 牛に引かれて善光寺参り:信濃の小諸の近くに、信心の薄い老婆がいた。川で布をさらしていると牛が現れ、角に布を引っかけて走り去る。追いかけて善光寺までたどり着き、そこで初めて手を合わせた。のちに近くの観音堂で、牛にさらわれた布が観音像に掛かっているのを見つけ、牛は観音の化身だったと知る。小諸の布引観音の伝説で、思いがけない導きで良い方へ向かうことのたとえになった
- 赤べこ:会津・柳津の虚空藏堂の再建(1617年)で、大きな材木を運ぶのに難儀していたところへ赤毛の牛の群れが現れて手伝ったという伝説がある。疱瘡除けの赤とも重なる。→ 赤
- 牛の角突き:新潟の小千谷・山古志に伝わる闘牛で、国の重要無形民俗文化財。『南総里見八犬伝』にも出てくる。全国の闘牛のなかで、勝ち負けをつけず、引き分けで終えるのを原則とする
- 精霊馬の牛:お盆に、なすで作った牛を供える。お盆の終わりに、先祖があの世へゆっくり帰っていけるように、という願い。→ 祖父、亡くなった人
- 丑年:十二支の2番目。直近は2021年で、次は2033年
タロットの牛
ウェイト版には、牛が描かれている札がある。
- 運命の輪:大きな輪の四隅の雲の上に、天使、鷲、獅子、牛が本を開いている。旧約聖書のエゼキエルが見た四つの生き物で、キリスト教では四人の福音書記者にあてられ、牛はルカ。運が巡るなかで、牛は動かない土台の側にいる
- 世界:花輪の中で踊る人物の周りの四隅に、同じ四つの生き物。一巡りが完成する札で、牛の夢を見た日にこの札が出たなら、長く運んできた荷が目的地に着く
- ペンタクルのキング:ぶどうの模様の衣の王が、牡牛の頭の彫られた玉座に座る。地に足のついた豊かさの札。牛の夢と金運が重なっている
世界の象徴としての牛
- 十牛図:中国・宋の禅僧、廓庵が伝えた十枚の絵。牛を探しに出て(尋牛)、足跡を見つけ(見跡)、牛を見つけ(見牛)、捕まえ(得牛)、飼い慣らし(牧牛)、牛に乗って家へ帰る(騎牛帰家)。牛は本来の自分を表し、最後は町へ出て人と交わる姿で終わる。日本の禅寺でも長く読まれてきた
- ナンディン:インドのシヴァ神の乗り物である白い牡牛。シヴァの寺では、ナンディンの像が入口で本尊の方を向いて伏し、いつまでも神を見つめている
- アピス:古代エジプトで、メンフィスの神プタハの化身とされた聖なる牛。死ぬとミイラにされ、セラペウムに葬られた
- エウロペと牡牛座:ギリシャ神話で、ゼウスは白い牡牛に姿を変えて、王女エウロペを背に乗せ海を渡った
北野天満宮によれば、天神の名のもとになった仏教の神々も牛にまたがる姿で描かれていたという。シヴァの寺の入口で伏すナンディンと、太宰府で伏したまま動かなかった牛は、どちらも神の居場所を知っていた。夢の牛が立ち止まったなら、そこが自分の荷を下ろす場所。

関連する項目
馬・白・黒・赤・神社・神様・お金・宝くじ・試験・出産・祖父・亡くなった人・追いかけられる
今日の一枚
大アルカナから一枚。
